―世界には数多くの小型スピーカーシステムがあり、今までにも非常に多くのものが生産されてきました。しかしほとんどのスピーカーシステムは短い期間に粗大ゴミになり処分されているのです。その中にも数種のスピーカーシステムが有名になることは有りましたが他と大きな違いは無く、完成度が低い為に継続的な生産には至っていないと思います。小型のスピーカーシステムの完成度を上げることは非常に難しく、相当の技術と経験が必要だと思われます。スピーカーシステムはスピーカーユニットとネットワークユニット、スピーカーボックスから成り立っていますが、正統派のスピーカーユニットの開発や研究は1960年頃に終わり、その後の開発や研究は見られません。その原因は高ければ売れないという商業主義もありますが、1960年代以降に音楽の価値観や方向が変わり、高度の技術を持つ研究者は他の産業に移り始めたのです。それまでは現在の宇宙開発などの先端産業を担う能力のあるような技術者が音響設計に携わっていたと思われます。しかし、現在は赤字産業のオーディオ界にそのような能力のあるものが携わっているとは考え難く(この発想は蛙クサい)、ニーズも便利さや小型化へ移っていたためデジタル中心になり、音楽を楽しむということに対して音質への欲求が少なくなっていったように思われます。こうして安易な開発が進められ最終的に「良い音は原音再生ではなく、個人の好む音作りで、その音には多くの種類がある」などと発言しています。これでは演奏家の意図する意味や感動や感情は曲げられ、異なった音で聞こえてくるのです。喫茶店の邪魔にならないようなバックミュージックや、音がないと寂しいからテレビのようにつけっ放しにするステレオとして使用するには充分でしょうが、大人がまじめに音楽を聴く道具としては寂しすぎます。
究極のスピーカーユニットを設計する場合、アンプから出力された信号の全てをそのまま音に変えることを科学者は考えるはずです。そうすると、振動板は非常に軽く強く、磁石は強力で、磁場を強力にするためにギャップは極力狭く作る事を自然と思い付きます。こうして作られたスピーカーユニットは高能率で低入力になり、1〜2Wの入力でも十分な音量になります。最近のスピーカーユニットは低音を伸ばす為に振動板を重くします。そして能率が下がる為に磁場のギャップを広くし、ボイスコイルを太くして耐入力を上げます。こうして正反対の低能率で大入力になってしまうのです。
それでは本格的な正統派の小型スピーカーユニットは何があったかお話しします。今は中古品でも非常に高価になりますが、大昔のウエスタンエレクトリック、シーメンス、ジェンセンは非常に能率が高いユニットでした。しかし、音質的には良いのですがフルレンジの為に広い帯域を再生する事が困難です。そこで目をつけたものがエレクトロボイス(元アルテック)の409ユニット、現在でも20センチ級としては世界最高の能率を持ったスピーカーユニットです。このユニットは大昔の化石みたいな物でほとんどそのまま生産を続けられています。このユニットは同軸2ウエイの為に帯域もある程度広く良好な為にそのままの状態で18年前から409システムとして製品化し好評を得ています。
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