ROTEL RB-980BX






【ROTEL】
イギリスを拠点に展開しているけれど国産らしさがある。
厳格だけど温柔で、渋いけど暗いというわけでもなく、美音だけど甘美とまではいかない。
でも音楽的。音楽の本質のみは息をしている。

 Exceptional Sound. No Exceptions
 この理念のとおり。




PowerAmp.


  【RB-980BX】 パワーアンプ 100w×100w(8Ω)。10kg程度で軽いアンプ。この端子とかいかにもチープで面白くないんだけど、シンプルな構成のアンプは音楽が活きている。接点が少なく感性がピュアのままである。
 ローテルは素直な音作りをしている。フラットなままに出てくる。素っ気無い明るさで前へ出てくるところはSHARPの1ビットデジタルアンプに似ている。ほのかな馨しさを感じさせる響きは黒い時代のテクニクスにも通じる。洒落たモーションで訴えてくるところはマランツに似ていて、ミネラルバランスのよいところはミュージカルフィデリティーにも似ている。でもローテルはローテルとしての優れた特質がある。解像に甘さはあるけれど、音楽に無欲に接近できるところがとくに980BXの美点。音楽性の中に無個性が敷衍してる。SANSUIの907のように重心は低くないが、軽さが持ち味になった低音の響きに嫌なところがない。コーヒーブラックで飲んでほっと息をつきたいね。




チープな筐体に、ブラックゲートの電解コンデンサ搭載



 SANSUI同様、アンプの役割のわかっているフォーマルな造りをしているけれど、アマチュアアンプではないから出たまんまな音ではない。料理されている。蕎麦の薫りを殺さずに。
 精密機械と違って感性の入り込むマージンの大きなオーディオにとって、メーカーの理念は音に体現される。名機とよく言われる980BXは日本文化の徳性ともいうのか、海外に向けるジャポニズムとしての表現か、省略の美とか中庸を解している。
 平安京・平城京や江戸のような大都市が城壁を持たなかったのは、世界史で唯一ともいえる。戦争よりも自然災害のほうが恐ろしかった。そんな日本人には、自然に教え込まれた謙虚さがある。キリスト教宣教師が「特に布教させる必要のない国です」と本国に通達したほどの温厚な民族性、繊細な感性と細やかな指先で世界に奇跡的なインパクトを与えるモノづくり・・ さらには精神の基底部には、諦観と、はぐくまれた共存性が敷衍していて、虚飾を拝し、ほどよさをわきまえている。日本製品らしいモノづくりの完全さが生きてる。
【系譜】
RAがプリメイン
RBがパワーアンプ
RCがプリアンプ
800番はたぶん90年〜ごろの製品
900番はたぶん95年〜ごろの製品
1000番はたぶん00年〜ごろの製品
RA870BX→たぶんRA970BX
RA880BX→たぶんRA980BX
RA880→RA980→RA1070
RA985はリモコン付き
RB880→RB980→RB980BX
RB990BX→RB991→RB1080
 RA1070発売当時、低コスト生産の中国製になって品質が落ちたとの懸念が見受けられ、RA980BXが推薦されていたもよう。参考:ローテルエレクトロニクス社製。今はもう品質が安定しているようだ。



試聴
ロビーロバートソン
SP:Spendor SP100