USHER S-520U


サランネットのUSHERというロゴはでかすぎてやや節操ない。接着がはがれて回転するし。
S-520V ブラック仕上げ

S-520III パール・ホワイト
S-520V パールホワイト

驚愕のスピーカーから人気スピーカーへ …アッシャー・スピーカーが初めてここに登場したのは2002年7月のことでした。このスピーカーの登場で、今まで中国製や台湾製を何となくバカにしていた人達はまさに「驚愕」しました。考えられない価格と、考えられない性能、音質、当時この商品リポートを担当した飯田明さんは、正直に「技術、遊び心、志、音、全てよし」と、勇気を持って絶賛いたしました。それから2年の歳月の中でツィーターを改造したマークIIIが発売されましたが、皆様のご支持は1,000セットを超えました。それはほとんど原価に近い形での販売価格にも原因がありますが、そのスピーカーの魅力に底知れないものがあったからです。
*音の次は美しさへのあくなき挑戦 …ここまで評価を得たスピーカーの実力に対し、私達は次に新たな要求をいたしました。それは飛躍的なデザインの向上です。それも限られた予算の中で、このS520の魅力を生かしながらの美しさの追求です。この要求にアッシャーは「ピアノ塗装仕上げ」という方法で応えてきました。今までの価格的魅力を損なわず、性能も損なわず、このスピーカーを持つ喜びを満足させるスピーカー・・・そこに導き出されたピアノ仕上げは、まさにその要求を満たすものでした。
*ピアノ仕上げはブラックとパールホワイト …ピアノ仕上げの色は2色、黒とパールホワイトとも呼ぶべき白いタイプです。この美しい仕上げを見た人は、素手で触るのはもったいなく、必ず手袋をしたくなるでしょう。一つの指紋さえ付けたくない、美しい仕上げなのです。
音はいままでのり紙付きアッシャーの音です。これから折りにふれて評論家の方々に聴いていただいたリポートをA&Vvillageに掲載していただきます。最初の入荷は雑誌発行直前に50セット入荷しました。申し込み順番でお送り申し上げます。新しいピアノ仕上げの音をお楽しみ下さい。従来のマークIIIは当面併売いたしますが、順次ピアノ仕上げに切り替えていく予定です。
 [S-520 III 主な仕様]
形式:2ウェイ方式(ツィーター UA-025-10、ミッドバス KSW2-5029B)
周波数特性:55Hz〜20,000Hz。インピーダンス:8Ω。
出力音圧レベル:86dB。重量:6.3kg。寸法:18W×25D×30Hcm。

 [参考]:http://www.localmailorder.com/ …この店では中身のよいものを取り扱っている。話を素直に聞いてくれるからと、親切にしていただいた。檜のインシュレーターはここのおじいさんにもらった。




 S-520は良心的に安い。値段はS-520Uは3.5万円、上記のピアノ仕上げのS-520Vは四万円。S-520VはS-520Uのデザインをピアノ仕上げで洗練させたというもの。Uは初代のS-520に手を加えて重量も若干増しているが、Vでは主な変更はないようだ。
 USHERという銘柄を知った当初、どんな音がするのかとうきうきしていた。S-520という型番はとりわけ安く、ウイーンアコースティックと同様にXPPの透明ウーファーを使っているというのも個人的に気になっていた。しかし実際に足を運んで試聴してみたところ、なんか詰まってて、やっぱこんなもんか、、と現実は厳しいなぁという気分になった。それで「もう少しメリハリのある音が好み(メリハリのある音は本当は好みじゃないけどあまりにその対極にある音だったので)」と言ったらそれなら前のUのほうがいいと言われて(キャビネットが違うだけだからそこまでは期待できないなと思いつつ)聴いたら本当に自然に伸びていて、鼻のあたりになにかが詰まってるみたいなところがなかった。それがネックになっていたのかすごく自然で躍動的な音に聞こえ出した。そして買うことに決めた。キャビネットだけでこんなにも変わるんだと初めて知った。Vはキャビネットがガチガチで響いてないのが少々鼻づまりな気がするが、リッチな厚みがあるので、あらゆるオーディオを聴きつくした人とかホッと一息つきたい人向けということのようだけど、もっと自然な伸びやさを求めたくなる。自分にはマイルドすぎる。
 デザインはやはりVのほうが麗しかったけど、S520Uも上等。裏までちゃんとブラック。丁寧だ。TANNOYとかVictorとか、計算された縦横のバランスや洗練されたマテリアル感を醸してスマートだけど、USHERは写真で見るといかにも作り物という感じ。でも直に見ると結構自然。クレモナ気取りに思っていたCP-8871も、結構独特のフォルムをしていた。音はJoseph D'Appolito博士という方の顔写真のとおり、ナイーブで複雑で繊細な音だった。S-520Uのように単純な音ではない。傾斜の角度もクレモナとは比べ物にならない、たいそうな造りをしていた。あそこまで傾斜させているのは、空間に多角的に反響し、自然にふくよかに織りなされて耳に伝えたいからだと思う。あまりリニアな聴き方をしたくないと。また、ユニットは非常に重いけどその重心を前面パネルだけに委ねないようにしたいのかもしれない。側面にも重みを分散させたいと。もともとユニットメーカーともあり、使い方に独特さを感じる。
 しかしS-520Vはなぜあんなにナローレンジで曖昧な音になってしまったんだろう。アンプによっては(特に国産アンプなど)違和感なくなるかもしれないが、熟成させすぎというか。S-520IIは低域のファンダメンタルな部分が音量を上げたときなどやや空を切っていて、相対的に高域が目立つようになってくるから、その点のバランスをよくしたかったのかな。




S-520II XPPウーファー
 XPP素材のウーファー。ニュートラル基調だが透明な色がよく乗っている。ニフラムの音。このユニットの音はとにかく厭味さがない。全身で委ねられる。
 Vienna Acousticsの音はとても気に入っていた。あのXPPのウーファーの醸す低音が好きで、S-520が気になっていた。S-520V聴いてみたらViennaAcousticsとは結構トーンが違った。しかしXPPという素材の持つ音の形質はほかの素材で出すことはできず、この素材による音が自分の求めるところに沿うようだった。




 自家製のユニットKSW2-5029E 一本たったの¥2980. ¥2980の音なんだ、と思う。ドイツアセンド社のSystemC5はシアーズ製。小型同軸2ウェイ型で形式は違うが透明のユニットを使っている。そちらは定価40万。ProACも同様の高分子素材を採用している(RESPONSE 1s等)。ヴェラティ・オーディオのTaminoも多分XPP。USHERは台湾のメーカーだが、設計はヨーロッパでヨーロピアンサーンド。なかなか優しくていい。





山水の枯淡の陰影
 S-520のピアノはリッチな厚みまで出している。ピアノの音はメタルコーンのスピーカーのほうがオーソドックスだと思われがちだけど、本来はそんなには冷たい音はしない。ターントーンという。



WEINBURG
自分家のアップライトピアノは乾いた音だけど。





 相性にはそんな神経質になる必要ない。JBLやB&Wには厳しい組み合わせというものが存在するけど博物的ゲージをフィードバックするS-520ではトーンの問題になる。DENONにはDENONの、marantzにはmarantzの、SANSUIにはSANSUIのトーンがある。
 画像のFlying MoleのDAD-M100proでドライブしてみる。その強力なドライブに追随している解像がある。デジタルアンプはトーンというものがほとんど無く、蒸留水をウォーターガンで噴射されているかのようなリニアリティー。使い始めた頃は落ち着かなかったけれど、USHERのS520はニュートラルなわりにわりとヴェールの厚い音で、テクノストレスに対する器があり、肺活量をカバーする風船のようにDAD-M100proのレンジが悠長にコンビナートされている。直截的に駆動されるけど、要するにDAD-M100proによりマッキンのプリの濃厚な薫りがノンシャランに引き出されてサルピス状態であり、DAD-M100proに対するS-520Uのキャパシティーにより音楽は喨々としていて愉快なのである。…。