audio-technica  ATH-CKM99




ATH-CKM99

光のような透明感がある。

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【audio-technica ATH-CKM99 概観】
「当社カナル型ヘッドホンの中で最大口径となるφ14mmドライバーを採用」…一般的なイヤホンより一回り大きく、手に持つとずっしりとした重みを感じる。その拡大した振動エネルギーは、ふくよかな音像やリッチな中低音などのエッセンスではなく、D.レンジの方面に廻されている印象。曖昧さのない透徹とした音を志向されている。片チャンネルのみを耳に突っ込んで聴いてみるとわかります。片チャンネルでクリアルに音が聴けるイヤホンなんて存在しているのです。このイヤホンの明晰さには使いはじめいつもハッとしている。でもなぜか30分で飽きている。なにも考えずに使う分にはよいがこの価格帯のイヤホンを買う人がなにも考えずに純粋に音楽を聴いてる事はなく、たまに精細に聴くためのイヤホンとしては良いが音楽的には魅力が薄いかもしれません。世界各国のどのイヤホンを聴いても色香を感じるのは単なる異国情緒かもしれないけれど、このATH-CKM99はaudio-technicaのカナルにおいても最もモニター的でフラットで(高低まで同じ音圧で延びていてドンシャリでもあるが)トランジェント特性に優れた音を成している。世界で最も色づけの少ない、唯物的なサウンドと言っていい。
解像量はATH-CKS90〔Solid Bass〕と差異はないけど 解像の繋がりの良さと透明感に違いがある。かなり高域重視な設定で最低域の沈み込みは少ない(新型のATH-CKR7は更に高域が洗練され低域は出てくるが曖昧になった)。ソニーのようにナローレンジではないけど、レンジが平坦に延びている反面、ソース原因のつんざく高音は生じる。

音楽的├◇+◇+◇+◇+◆┤モニタ的
濃厚 ├◇+◇+◇+◇+◆┤あっさり
高分子├◇+◇+◇+◆+◇┤素粒子
軟質 ├◇+◇+◇+◇+◆┤硬質
Jazz ├◇+◆+◇+◇+◇┤Classic
文系脳├◇+◇+◇+◇+◆┤理系脳



【筐体】
アルミ削り出しハウジングのmarantzのHP101に似た傾向の音で、比較するとmarantzの方が素直な音の印象を受けるが、ATH-CKM99の方がレンジが広く解像度が高く高度な音の印象も受ける。ATH-CKM99は弦楽の音には馥郁こそないものの、元気に演奏される爽快感がある。マーラー第九第三楽章(Rondo, burleske)の様なアグレッシブな楽章もストレスフリーに聴けるので、初め摩訶不思議でもあった。
Nintendo DSiのサウンドは解像は十分だがmarantzと共に無機質に均質化した世界になる。marantzのほうが優しく主張がなくATH-CKM99のほうが明るく弾けた音を出す。ビシバシした音がよく出る。どの種類の電子音もバランス良く出るけど官能は乏しい。



【音楽性】
ATH-CKM90〔BA型〕のような熟酥味はない。よい意味でも悪い意味でもモニター的というかテクニカ的というか、音色はATH-CKM90よりはATH-CKS90〔Solid Bass〕のほうに近い傾向。ATH-CKS90に比べるとソリッドさは和らいでる。SONY MDR-EX510SLのようにしっとりした音でもないが、このモデルには祓い清められたかのような肩の軽さと独自の爽やかさがある。

管弦楽でもジブリでも松任谷由実でも何を再生しても普遍的な再生音で、先行き不透明な景気不安を振り祓うかのようなサウンド。前作のシングルBA型ではヴォーカルが裏返ってたりする反面、昔聴いていた管弦楽CDには不思議な世界観を垣間見たけどそういった要素は一切ない。
ウィーンフィル少年合唱団のchorusは、少年の肉付きは無い。しかし埋没する声がなくバックコーラスもスムーズに聞こえる。機械的な声だけど分離感がある。ただこのコーラスに限ってはDENONのAH-C710には血の通ったところがあるのに、ATH-CKM99の性器の‥生気のない声は、原音忠実再生のモデルにありがちなパラドックスに陥ってる。

音楽性がない…といってもすべてに於いて無機質に陥るサウンドではない。野鳥のCDはポータブルで聴くと、森の中にいるような感覚を味わえるほど空間再現力があります。熱田神宮では「熱田の森の広さ」だと錯覚しました。犬の散歩中にも森林に満たされているので、このイヤホンの音の空間再現だと気づいたのです。鳥の量が半端なく聴こえる。平均的なイヤフォンの解像度ではさほど明瞭には聴こえない遠方にいる鳥の鳴き声が、よく聴こえてきて愛おしいほど。ここまで環境CDがリアルだと、もう音楽いらない気がする。(鳴き声の音色自体は甘美ではありません。カヤクグリなど つんざくのもある)。

「今まで聴こえなかった音が聴こえる度」(正統のバランスで)は、このATH-CKM99は最高峰。
しかしなんでも無難にこなすけどやはり音楽性を考えると類に漏れず適不適があるようで、木質的な音源に満ちたソースは、柔軟で温かい”木の響き”というイヤフォンの方が雰囲気が出る。オーディオ再生では深みのあったベルリオーズの『キリストの幼年』のCDは、音像に張りがなくただ単に遠くから聞こえてきます。それでも綺麗ではあるけれど褪色している。自然環境音が良いのか、木質的な響きが苦手なのか、オンマイクが得意でオフマイクが苦手なのか、かといって電子音は無機質で。よくわかりません。

ロリーナ・マッケニット"Ancient Muse"というアルヴァムは良くて、ゆっくりとしたそのヴォ〜カルは耳元で歌い、それが自然で可笑しくなく心地よい。録音の新しいものほど生々しく聴こえて地味な音楽ほどその良さがわかりました。このロリーナ・マッケニットという方は「民族音楽を持ち込んだ音楽を指向している」等と衝動買い時に読んだのだけど、スージースーみたいな不気味さはなく、想像していたような音楽とは違っていた。"民族的な音楽とは?"と思っていたのだけど、民族的・土着的な音楽ほど音響が重要なのだと再認識しました。キリスト教のミサも石畳の礼拝堂で聴くとほんとうに綺麗だし、大太鼓を響かせる真言宗のお経も本堂で聴けば、その音の迫力だけでお祓いになってる。初聴で聴かなくなったCDとかあったら、このイヤフォンのおかげで日の目を見ることになるかもしれない。



【音量適正】
音量を下げても滑らかに聴けりゅ。SONY WalkmanでVolume 16が最適音量の場合、Volume 11でも満足な音がする。ここまで小音量が綺麗なカナル型イヤホンは希有。Volume 5まで絞ってもそこそこに通った音が聴けます。ここまで絞ると階調の滑らかさがわかります。シングルBA型だと極小音量では一層の凹凸を感じるし、BA型はかね大音量が苦手なモデルが多いけれど、ダイナミック型のATH-CKM99はD.レンジと解像度が高く凡庸性が高いと思う。



【聴き疲れ度】
audio-technicaは比較するとSONYよりは聴き疲れをする印象があったけれど、このモデルに於いてはさほどでもない。SONYのMDR-EX510SLも同様に国産メーカーらしい精度の高い「聴き疲れないモデル」だけど、ATH-CKM99は大音量でも歪み成分が少ない気がする。大大音量でも崩れないところを考慮に入れると、MDR-EX510SLを凌駕しているかもしれません。



【その他】
外観:ATH-CKM90はMade in Japanだったけれど、CKM99ではMade in Chinaになった。高剛性純チタン ブラスト処理?のCKM90に比べると 外観実物は多少チープに映えてる気がする。
装着性:ATH-CKS90〔Solid Bass〕のように耳にみっちりと嵌る。フォームチップは面倒くさい人にとっては必要最小限の機能性。密閉感があり遮音性は高い。低域方面はやはりNCが必要。
タッチノイズ:歩くときにストラップ等(硬質なもの)とのぶつかり音を拾いやすい。
付属品:付属のポーチは圧力のかかるバッグに入れるとやがてつぶれます。でも防御力は高いです。





audio-technica ATH-CKM99 ほか 比較
左より v-moda, ATH-CKM99 R/L, marantz HP101, SONY MDR-EX500SL(白), ドラクエのイヤホン, SONY MDR-EX510SL(白), 三川ケーブル『木の響き』


ATH-CKM99を100とすると

【解像度】
marantz HP101 …85 / SONY MDR-EX500SL …90 / MDR-EX700SL …100 / 木の響き …95 / v-moda …85 / a-technica ATH-CKS70 …85 / ATH-CKS90 …95 / ATH-CKM70 …80 / ATH-CKM90 …75 / ATH-PRO700 …115 / ATH-W10LTD …120

【音楽性】
marantz HP101 …125 / SONY MDR-EX500SL …130 / MDR-EX700SL …140 / 木の響き …140 / v-moda …130 / a-technica ATH-CKS70 …90 / ATH-CKS90 …90 / ATH-CKM70 …120 / ATH-CKM90 …145 / ATH-PRO700 …120 / ATH-W10LTD …115