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『パイドン』
31 名前:パイドン 2006/12/17 19:29
では、あなたに初めからすべてを詳しくお話しするように努めてみましょう。この日に先立つ日々においても、いつも、私も他の人々もソクラテスのもとに通うのを常としていました。あの裁判が行われた裁判所のところへ朝早く集まってはね。それは牢獄の近くにあったからです。われわれはいつも、牢獄の門が開かれるまで、お互いに話をしながら待っていました。門はあまり早くは開かれなかったのです。門が開くと、われわれは中へ入ってソクラテスのもとへ行き、たいていはあの人といっしょに一日中を過ごしたのです。とくにあの日は、われわれはいつもより早く集まりました。というのは、その前日、夕方牢獄から出るときに、あの船がデロス島から帰ってきたことを聞いたからです。そこで、われわれはできるだけ早くいつもの場所へ来るようにと、お互いに知らせ合っていたのです。われわれが牢獄へ着くと、いつもはわれわれを入れてくれる門番が出てきて、待っているようにと言いました。かれが命ずるまでは、中へ入らないように、と。「というのは、いま11人の刑務委員がソクラテスの鎖を解いていて、今日かれは死ななければならない、という命令を告げているところだからです」とかれは言いました。しかし、それほど長い間もおかずにかれはやって来て、われわれに入ってもよいと告げました。中へ入ると、いましがた鎖から解かれたソクラテスと、クサンティッペが――むろん、ご存じでしょう――あの方の子供を抱いて側に座っているのが、見えました。クサンティッペはわれわれを見ると、大声をあげて泣き、女たちがよくそう言うようなことを言いました。「ああ、ソクラテス、いまが最後なのですね、この親しい方々があなたに話しかけ、あなたがこの方々に話しかけるのも」。すると、ソクラテスはクリトンの方を見てこう言いました。「クリトン、だれかがこれを家へ連れていってくれるとよいのだが」
こうして、大声で泣き叫び胸を打って悲しむクサンティッペを、クリトンの家の者たちが連れ去ったのです。その間、ソクラテスはベッドの上に起き上がり、脚を折り曲げ、手でそれをさすっていましたが、さすりながら、こう言いました。

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