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『パイドン』
32 名前:パイドン 2006/12/17 19:36
「諸君、人々が快と呼んでいるものは、なんとも奇妙なもののようだ。それの反対と思われている苦痛に対して、快は生来なんと不可思議な関係にあることだろう。この両者はけっして同時に人間にやって来ようとはしないのに、だれかが一方を追いかけてつかまえると、ほとんど常に他方をもつかまえさせられる。まるで、二つでありながら、一つの頭で結合されているみたいにね。僕が思うに、もしもアイソポスがこのことに気づいていたならば、きっとこんな話を作ったことだろう。神様は、快と苦が争っているのを和解させようと望まれたが、できなかったので、かれらの頭を一つに結びつけてしまわれた。このために、一方がだれかのところへやって来ると、その後で他方もまたついてくるのである、と。じっさい、僕自身にもちょうどそういうことが起こっているらしい。足枷につながれていたときには、脚にはずっと苦痛があったのだが、快がそれに続いてやって来たようだ」
すると、ケベスがその言葉を受けて言いました。
「ゼウスにかけて、ソクラテス、おかげさまで想い出したことがあるのです。つまり、あなたがお作りになった詩についてです。あなたは以前にはけっして詩などお作りになったことがないのに、ここ牢獄に来て以来、アイソポスの物語を詩に直したりアポロンへの賛歌を作ったりなさっているのですが、いったいどういうお考えでそういうことをしているのか、と、いろいろな人々に私は訊ねられましたが、とくに最近ではエウエノスにそう訊ねられたのです。それで、エウエノスが再び私に訊ねたときに――かれは訊ねるにきまっていますから――私がかれに答えられるようにと、いくらかでも気にかけてくださるならば、なんと言うべきかを教えてください」

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