AUDIO FESTA 2013



Nanotec-Systems(ナノテック・システムズ)


ナノテックシステムズのデモでは、電源ケーブルの音質の違いを体感することができた。HiT開発研究所のLTC101055[パワーアンプ]に接続されているortofonのリファレンス電源ケーブルをナノテックシステムズのPOWER STRADA-2 [PS-2V] に交換すると果実のジューシー感が出てきた。こんなにわかるとは。ortofonの電源ケーブルが真面目でHiFiな音なのか、それに比べるとナノテックシステムズの電源ケーブルはすごい生物的な音がする。LTC101055がとても生き生きとしていた。アンプのときほどではなかったが、SONNETEERのSACDPの電源ケーブルを交換しても変化した。




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POWER STRADA #306 PS306
GOLDEN STRADA #201 nano3
GOLDEN STRADA #302 nano3
POWER STRADA PREMIER-2
MUSIC STRADA #207
SP#79 SR SP#79 Special
金と銀の超微粒子を高濃度分散したナノサイズコロイド液が染みこんでいる
導体から導体へと飛び移る電子の動きがスムーズになるようだ

HiT LTC101055+CAS Optimista。機材が良いから判る。 電源ケーブルを取り替えたあとのサウンド。。
録音の音量が小さいです
ヘッドフォンの音量を上げる際は、あとで忘れず下げてください



HiT開発研究所 Hit Lab. ヒット研究所


HiTラボラトリー LTC101055S (with SONNETEER BRONTE, Leben RS28CX)
HiT開発研究所とNanotec-Systemsの共同開発のパワーアンプ
LTC101055 定価1250000円
軟体動物の滑らかさの出てる音質(((. .)))
半導体で真空管の音の動きを導き出している


物理寄りの人間は測定値こそが神の言葉になる。fレンジの広いもの、帯域的にフラットなものを優位とする。人間味というエレメントはたしかにあてにならな い。物理特性はうそつかない。しかし、周波数帯域が広くてフラットだからといっても微小信号が潰れていては機械的な音色になる。トランジスタアンプやデジ タルアンプはリニアな増幅が可能で帯域的にフラットで真空管よりもレンジが広大だけど、出力(音量)を落とすとある段階でスパッと音が出にくくなる特性が ある。楽音の一つ一つ、もっというと個々の微粒子の振動に於いてそのような特性がある。ゆえに余韻や空気感が出にくい。極小音量で聴くとよくわかる。トラ ンジスタアンプは全面的に曇る。出力が5W+5Wのパワーアンプなら極小音量時の特質は改善されるが限界はある。これはトランジスタアンプの宿命なのだろ う。トランジスタアンプの音色は(平均的に見ると)無機質であっさりとしている。よく言えばハスキーだが、潤い感は真空管アンプのほうが勝る。
宗教寄りの人は百聞は一見に如かずで論理より体験で考える。測定値より音の好みで選ぶ。ゆえに真空管という前時代的な素子が選ばれるわけだが耳が悪いわけではない。真空管はフィラメントから熱電子を放出して音を出すが出力が小さくなっても音は途切れずに出続けるようだ〔musica参照〕。半導体のような急峻に落ちる階段状の音とは無縁である。高熱になるため間近には置きたくないが、極小音量の音は石アンプに比べて死んでない。細かな成分がスムーズに出てくる。放出された熱電子が瞬間的にはプレートに吸収されないためか、S/Nは低く、トランジスタとは反対に余韻を引きずる傾向はある(一つの楽音のみならず一つ一つの音の素粒子においても。だから余韻嫋々に鳴る)。帯域的には真空管は起伏があって銘柄によってバラつきがあり、レンジも伸びていないが、人間が最も感受性を高く示す「声の帯域」が充実している。半導体と真空管は各々にメリットとデメリットがあるが、人間の耳には真空管の方が合っているだろう。モスキート音の通用しない大人にとって再生周波数帯域の広さなど無用の長物だと考えるなら真空管。

とはいえ真空管アンプは上記の特性よりも、「発熱」とか「消費電力量」とか「フラジルな感じ」といった、音より機械的な要素で拒まれていることが多いと思う。HiT開発研究所のアンプはそんな真空管の良さを半導体で実現したようだ。uLTC(ultra Linear Triode Circut)という回路で特許取得。101055という型番が暗示的。その音は、真空管のように余韻がでていて半導体のように引きずらない。帯域もフラットでメンテナンスフリー。機械的で無機質な音ではなくノルタルジックな音でもなく、軟体動物のような音が出ていた。本来ならエポックメイキングになってもいいぐらいのアンプだけどオーディオ自体がシーラカンス的な世界なので…。残念。たくさんの人はいたけど僕より若い人たぶんいなかった。そういや昨年アキュフェーズのフロアですごくいい楽曲のレコードを再生してもらっていたあのおじいさん今年は見なかったな。






LTC101055S 意外に重くないのが好感もてる。中身がゴテゴテしてない。
HiT LTC101055S \1250000
定格出力:60W+60W
W400×H192×D470 約18kg

このアンプは本体の触感もいい。さわさわしてみるとよいでしょう。見回してみると、背面のプレートには「ヒット開発研究所」と医療器みたいにそっけない書体で書いてある。入力はXLRとRCAが一個ずつ。セレクターを省くため並列にしてあるのでどちらかにのみ接続する。両方から音が出てくるので。NON-NFB。スピーカー端子が一つなのも好ましい。スピーカーのバイワイヤリングを活かすにはパワーアンプが二台必要なんですよ。ってこのクラスのオーディオを使う人には常識か。スピーカーをA/B切り替えて使いたい人は残念になるけど目をつぶってねっ。

ナノテックシステムズのデモが終わったあと、気丈なおじいさんが「darTZeelの新作が出たのかと思った、あのアンプの音好きなんだよねー」と言っていた。わかる気がする。HiT LTC101055Sの音はさすがにdarTZeelよりは日本的な温度になっているけれど、Ceramic Art SpeakerのOptimistaが本領発揮するような気持ちの良い鳴りっぷりだった。日本のアンプなのに箱庭的じゃない。音像がしこしこ滑らかなうえ余韻も深く。FurutecのADL GT40 USBというヘッドホンアンプの音をそのままパワーアンプにしたみたいな音だ。そのヘッドホンアンプはゲインが少なめでナイーヴな音である。このLTC101055Sは埋没要素の多いヘッドホン界とは無縁で全面的によく出てくる。あの軟体動物の滑らかさがスピーカーからも聴けるとは。我が輩は何度も感動ちた。

今年のオーディオフェスタではAUDEZ'EのLCD-3とHiTのLTC101055Sが明日にでも欲しくなった。買えないが。今の若い人は車を買わないならオーディオを趣味にすればいい。こんなにいい物があるのに。維持費はかからないし製造工程における環境負荷も少なく。Nanotec-SystemsとHit開発研究所は日本のメーカーだし。音楽が好きであることが前提になるけど。




ナノテックシステムズ&HiT開発研究所のLTC101055Sは、2013年のフェスタで個人的に一番だった
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